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2016.2.25 15:00更新【関西の議論】朝ドラの舞台に「演歌の灯」再び..."看板娘"は昭和歌謡を歌うアイドル 

大阪のシンボルタワー・通天閣のおひざ元、新世界に「なにわの演歌の殿堂」が復活した。ＮＨＫ連続テレビ小説「ふたりっ子」（平成８～９年）の舞台として注目された「通天閣歌謡劇場」が閉鎖されてから約２年半。通天閣のほど近くに「シアター朝日」（大阪市浪速区）がオープンし、再び歌謡ショーが定期的に開催されるようになった。全国的にも珍しい昭和歌謡を歌うアイドルグループ「あさひめ」を"看板娘"に起用し、関係者は「幅広い世代だけでなく、外国人観光客にも遊びにきてほしい」と話している。（格清政典）

成人向け映画館をリニューアル

　シアター朝日は、昨年１２月にオープン。同９月に約４０年の歴史に幕を下ろした成人向け映画館「新世界日活」を改装し、劇団公演など多彩なイベントに使える多目的ホールとしてリニューアルされた。目玉になっているのが「シアター朝日　歌謡ショー」「新世界ｄｅ逢いまＳＨＯＷ！」などと名付けられた歌謡ショーの復活だ。

　「新世界は『串カツの街』というイメージが強いようですが、もともとは興行の街。かつては吉本興業が通天閣を所有し、温泉劇場ではお笑い演芸が行われていました」

　シアター朝日を運営する「橋本土地興行」の橋本芳子さんは説明する。

　かつて「なにわの演歌の殿堂」として親しまれていた通天閣歌謡劇場は平成２５年６月末で閉館。その後、新世界の串カツ店が新たな「演歌の殿堂」を開設しようという動きもあったが、億単位の資金が必要なことから頓挫。

その結果、歌手たちは新たなステージを求めて新世界から消えてしまった。こうした現状に「何かの力になりたかった」と橋本社長は話す。

「通天閣のおやゆび姫」が教育係

　「なにわの演歌の殿堂」が復活することに、「通天閣のおやゆび姫」の愛称を持つ演歌歌手、吉野悦世さんがすぐに行動に移した。

　「演歌とおっちゃんが似合う街、新世界は自分が鍛えてもらった場所。再び新世界で歌えることを知って、何か恩返しできないかと考えました」

　そのなかで浮上したのが、シアター朝日を拠点にするアイドルグループの結成だった。吉野さんの人脈を通じて、関西で活動しているシンガー・ソングライターやモデルら６人を集めてアイドルグループ「あさひめ」を結成。吉野さん自らが「振り付け担当兼教育係」としてメンバーを厳しく指導している。

　「通天閣歌謡劇場と同じことをやってもダメ。おっちゃんだけでなく、もっと幅広い客層にも足を運んでほしいし、外国人観光客にも楽しんでほしい」と吉野さんは力を込める。

　シアター朝日のこけら落とし公演となった昨年１２月２３日には、デビューシングル「朝日夢見し～あさひめ参上！～」をリリース。ステージデビューも果たした。

　昭和歌謡を歌うアイドルとして、今年になってからもシアター朝日で行われる歌謡ショーに出演し続けており、吉野さんは「通天閣時代に応援していただいたお客さんも少しずつ戻ってきました」と笑顔を見せた。

新世界はご当地アイドル激戦区に...

　あさひめがステージに立つと客席から歓声と手拍子が上がった。オリジナル曲のほか、「リンゴの唄」「いつでも夢を」など懐かしの昭和歌謡メドレーを披露すると、最後には通天閣歌謡劇場の名物だった紙テープまでが投げ込まれるほどに。

　ステージを終えた副リーダーの中村美優さん（１８）は「楽しかった」とニッコリ。シンガー・ソングライターとしても活動している安西彩矢さんも「お客さんがとても優しくてうれしい」と話す。昭和歌謡を歌うことについては、モデルとしても活動している大久保成奈さん（２３）が「カラオケでよく昭和歌謡を歌っているので、そんなに違和感がありません」。最年少の木村あやかさん（１１）は「お客さんから『うまくなったね』って言われるのがうれしい」と話していた。

　そんなメンバーたちの姿に吉野さんは「また新世界で歌えることもありがたい。新世界にはライバルが多くいるので、切磋琢磨（せっさたくま）しあって後輩を育てていきたい」と気を引き締める。

通天閣歌謡劇場の跡地は、土産物店などが入った「通天閣わくわくランド」になり、「ＳＴＵＤＩＯ　２１０（ツーテン）」と名付けられたステージを併設。ここでは、「まいどリームス」「ハンバーガールＺ」の２組のアイドルグループが拠点にしており、無料で定期公演を行っている。

　あさひめの次回出演は、３月２７日の予定。大阪有数の観光地はアイドル激戦区となり、注目を集めそうだ。